以前の記事では経済学の分析を消費者目線から行なっていきました。そこで今回は消費者に焦点を当てて分析していきたいと思います。
生産者行動の理解は、経済学における重要な要素であり、特に企業が意思決定を行う際に役立ちます。この記事では、生産者の行動を短期に焦点を当て、完全競争における財の生産、費用曲線、収入曲線などのキーポイントを詳しく説明します。
完全競争市場
今回の内容を考える上で重要な前提が、市場は完全競争と不完全競争(独占、寡占)に分かれるということです。まずは次の特徴を押さえてください。
・個々の買い手や売り手の行動は、市場価格に影響を及ぼさない
・市場において全ての売り手は同じ財を生産する。
・市場の参入と退出は自由
財の生産
企業は財を生産するとき、何の設備をどれほど使うのか、何人の労働者を雇いどう投入するのかを考えなければなりません。その時に有効となる考え方を見ていきましょう!
労働と物的資本
財の生産は、労働と物的資本の組み合わせによって実現されます。企業はこれらの生産要因を組み合わせて財を生産し、生産力を最大化しようとします。
短期と長期とは
最初に、今回は短期での分析について考えると言いました。ではそもそも短期とは何なのかから説明していきます。
企業は労働者(労働)や機械、建物(物的資本)を抱えていますが、前者は雇用や解雇が比較的しやすいのに比べて設備は借りる場合でも購入する場合でも簡単に手放したりできないですよね。短期とは労働のような要素は変更可能な期間を指し、長期では短期で固定されていたもの全てが変動可能となる期間を表します。
限界生産力と収穫逓減の法則
限界生産力は、最後の一単位の生産要因を追加したときに生産量がどれだけ増加するかを示す概念で、重要な指標です。
収穫逓減の法則は、生産要因を増やし続けた場合、あるところから限界生産力が減少するという法則です。これは、生産要因の増加による効果が次第に減少することを意味します。例えば、少ない物的資本に対して大量の従業員を投入したらどうなるでしょうか?何人かは手持ち無沙汰になってしまいますよね。このように、投入物が不釣り合いである時に収穫逓減の法則が起きてしまうのです。ゆえに、雇用主は新しく人を雇う場合にはそれによって生産性は下がってしまわないかを考慮しなければなりません。
費用曲線
次に、ミクロ経済学における重要概念、費用曲線について考えていきましょう。まずは語句の説明から。
1,固定費用(Fixed Cost)・・・物的資本のような短期では固定された費用
2,変動(可変)費用(Variable Cost)・・・労働力など、短期でも自由に変更可能な費用
3,総費用(Total Cost)・・・固定費用+変動費用
4,平均固定費用(Average FC)、平均変動費用(AVC)、平均総費用(ATC)・・・これらの費用を総生産量で割った費用
5,限界費用(Marginal Cost)・・・生産量を追加で1単位増やすことでかかる追加費用→総費用の増加分/生産量の増加分
これらの変化を量を曲線にしたのが以下の図になります。
出典:中小企業診断士に出題される用語辞典
簡単に、これらの曲線は何を表しているのか、特徴をまとめたいと思います。ちなみに平均費用=平均総費用だと思って大丈夫です。
まず、これらの曲線が右肩下がりの間は生産効率がいいため、生産物ひとつあたりの平均費用が小さいことがわかります。しかし、ある地点で各費用は上がっていますね。これは、収穫逓減の法則により生産の増加量が減ったことで、相対的に費用が上昇していることを意味します。
収入曲線
収入曲線とは、文字通り物を売った時の収入を図にしたもので、何らかの事故やトラブルがない限り売れば売るだけ収入は増えるのでそう収入曲線は右肩上がりになります。
限界収入曲線
限界収入とは、追加の一単位の生産・販売によって生じる追加の収入のことを指します。
ここで重要なのは、完全競争市場において、限界収入曲線は水平であり、均衡価格に等しいということ。なぜか。
例えば、完全競争企業にも関わらず価格をあげたらどうなるでしょうか。先ほど説明した通り、完全競争市場では財の差別化はないので価格をあげてしまったら買い手は皆他の企業が販売する安い方を買ってしまいますよね。反対に、市場均衡価格で売りさえすれば財は全て売れるので現在から価格を下げる必要もありません。
つまるところ、完全競争において全ての財は完全に弾力的な需要であるということです。
分かりやすい経済学教室
上のケースは直線上の価格であれば財はいくらでも売れることを表しています。
弾力性については今回の内容の本質ではないので、わかりやすく解説した記事があるのでこちらも参考に!-経済学における「需要と供給の弾力性」とは?わかりやすく解説!–
限界費用と限界収入の関係
利益を最大化するために、限界収入(完全市場における均衡価格)と限界費用の関係を考慮することが重要です。一般的に、限界収入曲線が限界費用曲線を上回る限り、生産・販売量を増加させることで利益を増加させることができます。逆に下回る場合、生産・販売量を増加させることで利益は減少します。したがって、利益を最大化するためには、限界収入と限界費用が等しくなる点での生産・販売量を選択することが適しています。
応用
企業の操業停止
利潤最大化のために、もうひとつ考慮しなければならないことがあります。それが平均変動費用です。確かに限界費用=限界収入が最適な生産基準ではありますが、そもそも収入より費用が上回っていたら企業は赤字ですよね。
つまり、上の図で限界収入曲線がQAより上の部分で生産、販売をするべきなのです。
ここで、平均総費用は考えなくていいの?と思った方、優秀です。平均総費用は何からできていたか覚えていますか?そう、平均固定費用+平均変動費用です。
実は経済学においては、一度支払ってしまった固定費用を短期においては赤字としての考慮に入れないルールがあるのです。このような費用を、サンクコストと言います。
限界収入が企業の供給曲線になる理由
短期において限界費用曲線は企業供給曲線になります。企業は限界費用=限界収入(均衡価格)に従って生産量を決めることを考えればわかりやすいはずです。そして、企業は変動費用曲線より下の水準では生産をしないので、QAより右側の限界費用曲線が企業の短期供給曲線となるのです。
まとめ
生産者の立場から、完全競争において費用曲線と収入曲線がどのような役割を果たすか解説していきました。今回の内容は金儲けに役立つ内容でもあるため、経済学は理論的だけど実践的ではないと考えている人でも読み応えがあるのではないでしょうか。
最後に、今回の内容は本来図を多く使って視覚的に理解するべき内容です。そこで、自分が読んで役に立ったおすすめの書籍を紹介しておこうと思います。
値段的にも内容的にも初学者なら圧倒的にこれ。非経済学部ならこれだけでいいレベル
現在自分がメインで使っている参考書。値段も大きさも張るけど網羅性は最高峰、内容も初学者でも全く問題ない。
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