経済学において、社会的余剰は経済の効率性を判断するための重要な指標の一つです。しかし、「社会的余剰」、「消費者余剰」、「生産者余剰」といった用語は、日常生活で頻繁に使われる言葉ではないため、多くの人にとってはなじみが薄いかもしれません。
この記事では、社会的余剰とそれに関連する概念について説明し、その減少や増加の影響、最大化する方法を解説していきたいと思います。
社会的余剰とは?
社会的余剰とは、経済全体で生み出される余剰のことを指します。これは、消費者余剰と生産者余剰の合計で求められます。
消費者余剰
消費者余剰は、消費者が実際に支払った金額と、支払う意思があった最高金額との差額です。例えば、ある財に対して、あなたが支払ってもいいと思う価格が1000円で、実際の市場価格が800円であれば、200円得した気分になりませんか?この200円が消費者余剰になります。
出典:科学辞典
生産者余剰
生産者余剰は、生産者が実際に受け取った金額と、商品を売る意思があった金額との差額です。例えば、ある商品を生産するコストが600円で、市場価格が800円であれば、生産者余剰は200円になります。
出典:科学事典
余剰の増加と減少
説明した消費者余剰と生産者余剰を合わせたものが社会的余剰となります。
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図からわかるように価格が下がれば、それだけ消費者余剰は大きくなりますが生産者余剰は小さくなります。逆に価格が上がれば、生産者余剰は大きくなる一方で消費者余剰は小さくなります。つまり、両者はトレードオフの関係にあることを押さえておきましょう。
社会的余剰を最大化するには
社会的余剰を最大化するためには、市場の供給と需要が均衡する価格、つまり均衡価格で取引されることが重要です。ある財の価格が均衡価格にあるということは、市場に参加している全ての消費者と生産者が取引できているということなのです。ゆえに、ここにおいて社会全体の幸福度が最大化されます。
死重損失
次に、社会的余剰はある場合において消滅してしまうことを説明します。
課税は社会的余剰を減らしてしまう。
ここまで、消費者と生産者という二人のプレイヤーだけで考えてきました。社会的余剰が最大化されるのはお互いにとっていい事だとこれまで述べましたが、現実はそう上手くは行きません。なぜか。
それは政府の存在です。
例:消費税
余剰の説明を聞いた人は「値段が上がるってことは生産者余剰が上がるからいいんじゃないの?」と思うかもしれませんがそうではありません。なぜならこの課税分は生産者ではなく政府へと流れるからです。
例えば消費税が20%課されれば1000円の財は1200円になりますよね。一般に価格が上がれば供給は増えるわけですが、この価格上昇は生産者の利益にはならないので彼らは1000円の時の生産量しか市場には供給しないわけです。その結果、消費者にとっては値上げであるため消費者余剰が減るだけでなく、生産者にとっても値上げ分供給量を増やすわけではないので生産者余剰は減ってしまうのです。
この時に起こるのが社会的余剰の消滅、つまり死重損失(deadweight loss DWL)になるわけです。
ならば、実社会に課税は必要ないかというと、そうでもありません。これについては、政府の役割について解説するときに述べたいと思います。
まとめ
・社会的余剰=消費者余剰+生産者余剰
・両者はトレードオフの関係ゆえに、どちらにも偏らない均衡状態が理想である
・課税は社会的余剰を減らしてしまうため集めた税収をどう使うかが重要となる
最後に、自分が読んで役に立ったおすすめの書籍を紹介しておこうと思います!
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