前回の記事では、経済学において「見えざる手」が効率的に機能しない場合があることを解説しました。今回は、その一例として「外部性」と「公共財」について解説していきます。
この記事を読むことで、自分の何気ない行動でも社会に影響を与えること、限りある資源をどう使うべきなのかを考察できます。
外部性とは
外部性とは、ある経済的な行動が第三者へと与える影響のことを指します。これには不利益を与えてしまうものと、逆に利益を生み出すものがあります。
負の外部性
例えば、工場の排ガスが近隣住民の健康を害する場合、住民は健康被害に対して治療費を払わなければならなくなるため、この排ガスは負の外部性を持っています。
正の外部性
例えば、ワクチンの予防接種をしていれば自分が保菌したとしても周囲に移す可能性を下げるため、ワクチン接種は正の外部性を持っているといえます。ちなみに、教育も正の外部性を持つことが証明されています。
外部性の内部化
外部性の存在は、市場を超えて他社へと不利益、利益を与えるために市場内の社会的余剰を減らしてしまう可能性があります。これを解決するために、外部性を「内部化」することが必要です。これは、外部性の影響を受ける第三者に、その影響に相当するコストや利益を補償することです。
民間交渉:コースの定理
コースの定理は、交渉によるコストが高すぎず、財産権が完全に確立されている場合、民間の交渉によって外部性の問題は解決されるという定理です。しかし、実際には取引コストが高額になってしまうことや、財産権が所在が明確ではない場合も多いため、コースの定理が適用できる状況は限られます。そのような時には、政府に頼ることになるでしょう。
政府介入:ピグー補助金、ピグー税
ピグー補助金とピグー税は、外部性の内部化を促進する政策手段です。ピグー補助金は、正の外部性を持つ行動に対して、政府が補助金を提供することです。逆に、ピグー税は、負の外部性を持つ行動に対して、政府が税を課すことです。これにより、補助金をもらうための正の外部性の促進と、課税を回避するための不の外部性の解消に強いインセンティブを働かせることができるのです。
公共財
これまで、財の需要と供給や消費者目線、生産者目線での分析をおこなってきました。実は、ここまでの説明に要した財は全て「私的財」と呼ばれるものです。そこで、私的財を含めた4種類の財の特徴を押さえましょう。
4タイプの財とそれぞれの特徴
- 私的財(Private Goods)
- 排除性:非消費者を消費から排除することが可能です。例えば、商品を買わない人はその利益を享受できません。
- 競合性:ある人がその財を消費すると、他の人がその利益を享受することができなくなります。
- 例:食料品、家具、車など
- 共有資源(Common Resources)または共通財
- 非排除性:非消費者をその消費から排除するのが難しい、または不可能。
- 競合性:ある人がその財を消費すると、他の人の消費が減少します。
- 例:漁場の魚、共有の放牧地、水など
- クラブ財(Club Goods)
- 排除性:非消費者を消費から排除することが容易です。
- 非競合性:ある範囲内で、一人が消費しても他の人の消費が減少しない。
- 例:有料の放送、私立の公園やプール、ジムなど
- 公共財(Public Goods)
- 非排除性:非消費者を消費から排除するのが難しい、または不可能。
- 非競合性:ある人がその財を消費しても、他の人の消費が減少しない。
- 例:国防、公共のラジオ放送、街灯など
フリーライダー問題
公共財や非排除性のサービスは、一人の人が利用しても他の人の利用に影響を与えないという特性があります。このため、個々の消費者や企業が公共財の供給、維持の費用を負担するインセンティブが弱くなります。なぜなら、他の人たちが支払う費用でその財やサービスを享受することができるからです。このような行動を取る人々をフリーライダー(タダ乗り)と呼びます。この問題を解決するためには、限界収入≧限界費用ルールで供給するか、課税によって運営費を賄うなどが考えられます。
共有地の悲劇
共有資源を利用する際の問題点として「共有地の悲劇」があります。これは、共有資源には非排除性があるゆえに各個人が自分の利益のために資源を過度に利用することで、全体としての資源が枯渇してしまう現象を指します。これを避けるために、外部性で学んだピグー税の検討や個人による共有地の私有化が考えられます(私有化してしまえば他人が簡単に入ることができなくなるため)。
まとめ
外部性は、市場の効率性や公正性に影響を与える重要な概念です。官民で外部性の内部化を促進することで、市場の結果を改善することが可能です。また、公共財は社会全体の利益を追求する上で非常に重要な役割を果たしますが、それに伴う問題点も理解することが大切です。これにより、持続可能な公共財の提供と管理方法を模索することができます。
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コメント
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